リキッドステーキングとリステーキング: stETHから始まったレゴの塔

公開日 2026年9月22日 · 約3分で読めます

通常のステーキングの弱点はロックです。預けたコインは解除待ち行列を抜けるまで使えません。リキッドステーキングはこのロックを解き、リステーキングはその上にもう一階を建てました。利回りの構造が精巧になった分だけ、リスクも同じ階数で積み上がった。それがこの記事の要点です。

リキッドステーキング: 預かり証が資産になる

Lidoのようなリキッドステーキングプロトコルに ETHを預けると、stETHのような預かり証トークンを受け取ります。

  • 預けたETHはバリデーターに回り、ステーキング報酬を稼ぎます。
  • 預かり証トークンの残高(または交換レート)が報酬分だけ増えます。
  • 預かり証は自由に売買でき、DeFiの担保にも使えます。

つまり「ステーキング利回りと流動性の両取り」です。イーサリアムのステーキングの大きな割合がこの経路を通るほど、標準的な仕組みになりました。

リステーキング: 同じ担保で保安をもう一度売る

リステーキングはさらに一歩進みます。すでにステーキングされたETH(またはstETH)を、別のサービスの保安担保としてもう一度差し出す仕組みです。EigenLayerがこの市場を開きました。

  • 新しく生まれるオラクル、ブリッジ、データレイヤーなどのサービス(AVS)は、独自トークンでバリデーターを集める代わりに、リステーキングされたETHの保安を借ります。
  • リステーカーは基本のステーキング報酬に加えて、AVSが支払う追加報酬を受け取ります。
  • その代わり、AVSのルールに違反する検証に関与すると追加のスラッシングを受け得ます。

リキッドリステーキングトークン(LRT)まで登場し、「預かり証の預かり証」という多層構造が出来上がりました。

利回りを階ごとに読む

階層 利回りの出どころ 持続性
基本ステーキング イーサリアムの発行報酬+手数料 プロトコルが続く限り持続
リステーキング AVSが払う保安利用料 AVSの事業性に依存
ポイント・エアドロップ 新興プロトコルのトークンインセンティブ 最も弱く、希薄化が前提

下の階ほど派手で、上の階ほど堅牢です。表示APYが突出して高いときは、ほぼ例外なく最下層が数字を膨らませています。

同じ階数で積み上がるリスク

  1. デペッグ: 預かり証トークンは原資産から乖離し得ます。2022年のstETHディスカウントは、パニック時に流動性が枯れると乖離が広がることを示しました。
  2. スラッシングの重畳: リステーキングは新しいスラッシング条件を追加します。基本ステーキングでは安全だった資産が、AVS側の事故で削られることがあります。
  3. コントラクトリスクの重畳: 層が増えるたびにスマートコントラクトが1つ増えます。どこか1層の欠陥がポジション全体を崩し得ます。
  4. 中央集権化の懸念: 特定プロトコルへの集中は、イーサリアム自体のバリデーター多様性を弱めます。生態系レベルの長い論争です。
  5. 流動性の錯覚: 預かり証はいつでも売れますが、いつでも適正価格で売れるわけではありません。その流動性は条件付きです。

参加前のチェックリスト

  • 預かり証の償還経路(直接償還の可否、待ち行列)を理解しているか
  • 追加利回りの出どころ(AVS手数料か、ポイントへの期待か)を区別できているか
  • 自分のポジションが依存するコントラクトの総数を数えたか
  • 最悪ケース(デペッグとスラッシングの同時発生)の損失を許容できるか

まとめ

リキッドステーキングはステーキングの流動性問題を解いた実証済みの仕組みで、リステーキングは同じ担保を再利用して新興インフラに保安を売る新しい市場です。利回りが層で積み上がるとき、リスクも同じ層数で積み上がる。この対称性さえ覚えておけば、レゴの塔を何階まで建てるかは自分で決められます。

本記事は教育目的の情報提供であり、投資助言ではありません。暗号資産は元本割れのリスクが高い資産です。投資判断はご自身の責任でお願いします。